信州大学繊維学部(上田市常田)の新井亮一准教授、木村尚弥修士らの共同研究グループはこのほど、100度の高温環境下でも変性しない、超安定人工タンパク質「SUWA」の開発に成功。米国化学会(ASC)発行の、合成生物学専門誌「ACS Synthetic Biology」Webサイトなどにも掲載された。
タンパク質は生体内で自己組織的に様々な複合体を形成し、複雑な生命現象を担っている。しかし、一般的にタンパク質は高温などに弱い性質があり、生卵がゆで卵になるようにタンパク質は変性(加熱などにより固まるなどの現象)することが知られる。タンパク質の工学的応用を広げるためには、その安定性の向上が不可欠と考えられていた。
同大はこれまでも、天然にはない新規人工タンパク質「WA20」の構造を活かした、タンパク質ナノブロックの設計開発を継続しており、ナノ㍍(1㍉㍍の100万分の1)スケールの極めて微小な世界で、おもちゃのブロック遊びのように人工タンパク質を組み合わせて、多様なタンパク質複合体の創出に挑戦してきた。
今回の研究では、WA20の安定性を顕著に向上させたSUWA(Super WA20)を開発。WA20の変性温度が75度に対して、SUWAタンパク質の変性温度は122度。常圧での水の沸点(100度)も越える安定性だ。さらに同研究グループは、耐熱性向上に寄与している構造についても解明した。
今回の成果は、従来のタンパク質の常識を大きく覆す画期的なもので、本成果を基板として耐熱性の高いバイオ医薬品開発や、ナノ構造の材料作成などの応用が期待できる。
[信州民報:2020年2月26日(水)]
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