今年、創立120周年を迎える上田市大手の(一社)上田高校同窓会(金子元昭理事長)は現在、記念事業を進めており、最優先事業で「濠」の改修工事に取り組む。
上田藩主の居館跡に建つ上田高校は、その歴史を伝える「門」「土塀」「濠」「土塁」が上田市指定文化財となっている。しかし、これらは老朽化が進み、とりわけ「濠」は給水ポンプ故障による水不足、水漏れ、汚泥の堆積により景観悪化、悪臭に蚊の発生など環境悪化が著しく、近隣住民の生活や観光に悪影響が生じるようになった。
そんな中、学校と同窓会関係者らは対応を検討。「市指定文化財ではあるが、所有者は県で県教委が管理者であることから、保全活動に市の補助金は使えず、県は『教育に不可欠』な施設ではないことから優先的な補助対象にはならない」となったという。
そこで同窓会を中心に学校とPTAで組織する、創立120周年記念事業実行委員会(日置勇二実行委員長)=同窓会前理事長=を立ち上げ、事業の一環として「濠の改修工事」を行うこととした。昨年12月初旬から水漏れ防止工事に入り、年末には水源井ポンプを交換。現在は水抜きを行っており、2月に入ったら汚泥の除去を行う予定だ。
同窓会事務局・倉澤克彦さん(73期)によると「3月3日の卒業式までにしゅんせつを完了させたい」という。倉澤さんは濠に飛来するカワセミの写真を撮り続けており、「今朝もカワセミが来たが、水の無い濠に驚いた様子。生き物たちの元気な姿のためにも、きれいな濠にしたい」と話す。また取材した27日には学校事務職員らが、濠に生息する鯉の救出作業を行っていた。
なお現在、創立120周年記念事業募金を約3万6000人いる同窓会員に呼びかけている。濠の改修工事のほか教育環境整備(空調設備機器導入・設置、10月24日開催予定の記念式典、学年記念行事、校史発行などの記念事業に活用する。また一般からの問い合わせも受け付ける。
同窓会は活動への理解と協力を呼びかけ、「門の屋根の補修も喫緊の課題で、今後も保全の課題は継続的に発生する。文化財を次代に受け継ぐためにも学校、行政、市民が一体となって管理を行える仕組みができると有り難い」と伝える。
[信州民報:2020年1月29日(水)]
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