上田市真田町戸沢地区の伝統行事「戸沢のねじと藁馬引き」(国選択無形民俗文化財)で使用する、『藁馬』を作る講習会が5日、戸沢公民館で開催された。
同地区では、藁馬を引く小さな子どものために家族が藁馬を作る習わしがあり、技術継承に取り組む戸沢活性化組合(宮島隆志組合長)が講習会を開き、制作の場を設けている。
この日は同組合広報部長の宮島幸男さん(現・自治会長)が講師となり、先輩から受け継いだ技術を伝えた。同講習会には「藁馬の作り方を学びたい」という人が地区外からも来ていたが、今年も昨年同様に新型コロナ感染拡大防止のため、地元の希望者のみに参加を限定し、対策を徹底して実施。会場には5組が参加した。
宮島講師は「美しく端正な伝統の藁馬を後世まで伝えていきたい」と、自ら作成した画像資料を用いながら実演し、わかりやすく説明。作り方を覚えた息子の清河さんも、一緒に指導にあたった。
使用する藁は参加者が持参するほか、活性化組合が藁馬用に育てたものや、遊休農地を活用して地域活性化に取り組む「戸沢酒米づくりプロジェクト」が育てたもの。酒米の藁は丈が長く、「藁を継ぎ足さずに巻き付けることができ、使い勝手が良い」という。
参加者は「教わりながら作らないと、良いものは作れないね」と熱心に作り方を聞き、真剣に手を動かす。
「初馬」を作るのは、1歳になったばかりの柳沢柚瑠くんのために参加した、祖父の章雄さんと曾祖父の山崎好明さんだ。章雄さんは「息子たちの馬は好明さんが作ってくれたから初めて。今後のために覚えたい」と言い、好明さんは「約20年ぶりに作る」と話す。途中から参加した父・悠貴さんは「作ってもらい有り難い」と言い、3世代の思いがこもった藁馬が完成した。
なかには毎年参加し、小さな藁馬を作る親子もいる。父親は小5になった息子の手元を見て「年々、上手くなる」と目を細め、息子は「楽しい」と言いながら一生懸命取り組んでいた。
戸沢の藁馬引きは、2月第2日曜の13日に実施。新型コロナ感染予防のため、米粉で色美しく作る餅「ねじ」を交換する儀式は取りやめとし、当日は該当者(希望者)がそれぞれ家から藁馬を引いて道祖神まで行き、参拝するという方法で行う予定だ。
宮島自治会長は「天然痘治癒・疫病退散を願って行ったという言い伝えのある伝統行事で、中止にはできない」とし、「例年見物に来る人がいるが、予防のため人が集まらないように注意して無理なく実施したい」と話した。


