上田市の信州大学繊維学部バイオメディカル研究所・新井亮一准教授と、慶應義塾大学理工学部の教授らに東京大学大学院医学系研究科教授らでつくる研究グループは15日、人工的に設計したタンパク質ナノ粒子「TIP60」の詳細な立体構造を解明したと発表した。
新井准教授らの研究グループは2018年、自然界に存在する2種類のタンパク質を連結した人工融合タンパク質60個から、直径22ナノ㍍程度で中空のサッカーボール形状の分子を設計・構築したことを発表。望みの機能や性質を付与できるタンパク質で、ナノ粒子をつくったことが注目された。
今回の研究ではTIP60を、クライオ電子顕微鏡を用いて解析。得られた大量の画像データをもとに三次元像を構成し、立体構造解析に成功した。TIP60は、正三角形状の孔を20個持つ特徴的な正二十面体型構造で、設計通りの中空構造であることが明らかになった。
新井准教授は「TIP60の構築時には大まかな構造のみがわかっていたが、今回は新しいクライオ電子顕微鏡を用いて観察したことで、原子レベルの分解能で精密に立体構造が解明できた」と話す。
今後の研究では解明した立体構造をもとに、タンパク質でできたTIP60の機能性の改変などを進めることで、医薬品への応用が期待されるという。具体的には、中空構造のTIP60をナノスケールのカプセルとして利用。中には薬を入れTIP60の表面には、がん細胞など病気の細胞に引き寄せられるような機能をつけることで、体内の必要な場所に薬を輸送するなどの活用が期待されるという。