【青木村】小さな美術館「スペース岡の泉」オープン空き家を購入し本格的美術館として活用!落ち着いた雰囲気の「展示空間」創り出す

信州民報

青木村沓掛の小さな美術館「スペース岡の泉」がこのほど、オープンした。館主の大泉文夫さん・展枝さん夫妻は、東京都青梅市が居住地だ。20年ほど前に展示場を探すなかで青木村を知り、空き家となっていた旧沓掛区公民館を購入。以来、東京と青木村を行き来し、本格的に美術館として活用することにした。


その第1弾として現在、所蔵する「浜田知明の作品展」を開催中だ。展枝さんが若いころ、銀座の職場でモーレツに働く日々を見つめなおす中、画廊で出会ったのが浜田知明の作品という。今回、「心惹かれ1枚1枚買い集めてきた」という作品を満を持して展示した。


美術館始動に際し、文夫さんは会場を整備。歴史ある建物の風情を活かしながら、窓に板を貼って展示用の壁を作り、展示パネルも手作りした。東京の古い家屋で使われていた欄間を、上部にはめ込む工夫も。調度品も古いものを活かし、落ち着いた雰囲気の展示空間を創り出した。


二人は「自然を〟普通に〝感じることができて、村民も〟普通に〝移住者を受け入れてくれる。青木村は本当に良いところ」と言い、「今後は生活に関わりを持つアートを紹介する美術館として、皆さんと共に創り上げていきたい。提案があったらお知らせください」と伝える。

『浜田知明 銅版画展』
現代に貴重なメッセージ
10月15日まで開催中!

スペース岡の泉では現在、『浜田知明 銅版画展』を開催中だ。


版画家で彫刻家の浜田知明氏(1917~2018)は熊本県生まれで、16歳で東京美術学校(現・東京芸大)に入学。同校を卒業するや入隊し、20代の大半を軍隊で過ごした。22歳から4年間は中国大陸・華北山西省で軍務に就き、戦後は昭和25年に銅版画の研究を始める。1950年代に日本の版画家が国際的に注目されるようになり、浜田も棟方志功らと並び日本を代表する版画家の一人となった。


1951年に発表した銅版画『初年兵哀歌』シリーズから注目を集め、なかでも1954年の作品『初年兵哀歌(歩哨)』は国際版画展で賞に輝いている。以降は国内外で活躍し、1989年にはフランス政府から芸術文化勲章を与えられた。98歳となった2015年も創作意欲は衰えなかったが、2018年に老衰のため亡くなる。


今展では『初年兵哀歌(歩哨)』はじめ、1950年代から80年代の作品30点余を紹介。館主は「人間観察をテーマに、エッチング・アクアチントという版画技法の工夫により、独自の表現を生み出してきた作家。戦争体験を印象強く作品に反映した一方で、ユーモアや風刺を表す作品もある」とし、「作品は現代を生きる私たちに貴重なメッセージを投げかけている」とする。


『浜田知明 銅版画展』は10月15日(金)まで開催。開館時間は午前10時~午後4時、月曜休館。入館料200円、高校生まで無料(企画展の内容により入館料を変更する)。冬期(11月~3月)は休館する。


住/青木村沓掛1246‐1。℡/090‐4202‐8234。

▲展示会場の様子。旧公民館の建物を活用し、落ちついた空間を創造
▲展示された作品
▲作品『初年兵哀歌(歩哨)』

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