【上田市】「酒の原商店」が「木桶の甑(こしき)」一般公開 魅力は〟強く節が少なく木目が美しい〝木製大桶の製作技術は風前の灯火の中…25日まで

信州民報

上田市上塩尻の信州イゲタ味噌醸造蔵元『酒の原商店』は、新調した「木桶の甑(こしき)」を25日(日)まで一般公開する。原商店は約35年前から醸造に使う蒸し器として、米糀用の米を蒸すために木製「甑」を使用。昭和20年代製のものを譲り受けてから、ずっと使ってきたが傷みがひどくなってきたことから6年ほど前、新調することを決めた。


しかし「木製大桶」の製作技術は、今や風前の灯火。2012年に香川県小豆島のヤマロク醤油5代目・山本康夫さんが「木桶職人復活プロジェクト」を立ち上げ、技術継承・後継者育成に取り組むが、国内最後の木桶メーカーは2020年をもって大桶の受注を終了した。


様々調べ、木桶職人復活プロジェクトを知った原商店5代目・原英和さんと有紀さん夫妻は、2020年1月に小豆島を訪問。同プロジェクトに相談すると、昔ながらの木製道具の内製化に2009年から取り組む、剣菱酒造㈱(神戸市)を紹介された。


早速、神戸へ向かった原さん夫妻。木製甑での蒸かしを見学し、細かい打ち合わせをして木の選別から全てオーダーメイド、納期450日で製作されることになった。


今回展示した「原商店・木桶の甑」は、剣菱酒造の受注生産「第1号」。剣菱酒造にとっても記念の木桶で、6月23日に原商店に納品。直径1㍍、高さ90㌢㍍で、奈良県の杉(吉野材)が使われている。「強く、たわみにくく、節が少なく、木目が美しい」とされる木桶は「80年は持つ」という。


有紀さんは「今では多くの蔵が金属製の甑を使っている。新調するにあたり親と子を交え3代で相談し、『木製の甑は木が余計な水分を吸収するので、安定した蒸米ができる』『昔ながらの文化を残したい』と、木桶を継続することを決めた」と語った。そして「看板商品の一つ『甘酒』をつくるので、年中フル回転の甑。重陽の節句(9月)ごろから新しい甑で、1回180㌔㌘の米を蒸かしていく予定」と話した。


展示は現在、同店の多目的スペース「遊地処(アジト)」で行っており、製作過程の記録映像や写真、底板などの関連品なども展示する。なお剣菱酒造は「原商店の木製甑」を皮切りに、社外の木製道具の修理・製造を開始し、醸造業の歴史・文化継承に一層の努力をしていくという。原商店は上田市上塩尻260、営業時間は午前9時~午後7時。水曜定休。問い合わせは℡22‐1941へ。

▲展示された「木桶の甑(こしき)」など

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