上田市立博物館で現在、企画展「ひな人形と春のことほぎ」を開催中だ。「ことほぎ(寿ぎ、言祝ぎ)」は、言葉でお祝いする意味。女の子の健やかな成長を願って祝う雛祭りもその一つで、今回は「春のことほぎ」をテーマに、春のお祝いを感じさせる資料を雛人形と併せて展示している。期間は3月23日(火)まで。
展示する雛人形は古今雛や享保雛など大型の雛人形とともに、今回は数年ぶりの展示となる「次郎左衛門雛」(江戸時代後期)も展示。同雛人形も大型で、県内でも残っている数が少ないものの一つという。丸顔に引目鉤鼻(ひきめかぎばな)の人形は、雛人形の流行に流されず、本流として最初から同じ形で作られ続け、京都の公家などに愛されていたという。
春のお祝いに関する資料は、旧華族・古河男爵家で使用されていた祝着など。着る人の幸せを願う吉祥文様の振り袖には、厄除けの薬玉や夫婦和合の象徴とされる婚礼道具「貝桶」などがデザインされている。振り袖などは上田地域在住の個人から借りた資料で今後、石川県金沢市の美術館に寄贈される予定のため、同館で展示が見られるのは本展のみだ。
また明治時代に旧上田高等女学校(現・上田染谷丘高校)の生徒が作った押絵雛なども並べるほか、初公開資料として昨年寄贈を受けた上田藩主仙石家旧蔵の鏡、料紙硯箱(りょうしすずりばこ)など3点も展示している。
同館学芸員・高野美佳さんは「新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、家にいると気分が落ち込んできてしまうが、鬱々とした気分を吹き飛ばせるような、華やかな雛人形や着物などを展示している」とし、「展示を見て春の訪れを感じ、嬉しい気持ちになってもらえたら」と話した。
なお展示時間は午前8時30分~午後5時(ただし入館は午後4時30分まで)。休館日は水曜と2月12日。入館料は300円。問い合わせは同博物館℡0268-22-1274へ。