NPO法人上田映劇は12日、今月31日(日)から上田映劇で上映される2作品、『ばるぼら』『白痴』の手塚眞監督の事前あいさつをトラゥム・ライゼ(旧でんき館)で行った。手塚監督は漫画家・手塚治虫さんの長男で、ヴィジュアリスト。手塚家の先祖は上田市手塚を本拠としたとされる武将・手塚太郎金刺光盛で、上田にゆかりある人物だ。
作品『白痴』(1999)は21年前の公開作品のデジタルリマスター版で、昨年から全国のミニシアターのみで上映している。当時、世界的にも最先端の技術を使い、上田市マルチメディア情報センターでつくり上げたゆかりある作品。
手塚監督は「世界に衝撃を与えた映像が、上田で作られたことは思い出深い。20年前の作品でも、現在の作品と思ってもらっても通用する」とし、内容について「極限の状況の中で、人間がどう生きる希望を見出していくかという主題を扱っているが、当時は伝わり難かった」と振り返った。
公開の後にテロや経済破綻、大地震などが続き、コロナ禍へ。手塚監督は「コロナの感染で、不安を抱える生活を強いられている。このような中、この映画を見ると良く伝わる。今、一番見せたい作品」と紹介し、「制作でもお手伝いいただいた上田市で上映できることは、非常に嬉しい」と話した。
また最新作『ばるぼら』(2019)は、火の鳥、ブッダ、ブラック・ジャックなど名作漫画と同時期に連載した大人向けのファンタジー。上昇志向作品が多い手塚治虫さんの作品の中で唯一、退廃的な内容を扱い、最も異色の作品とされる。
手塚監督は「子どものころからこの作品が好き。不思議な魅力があり、ずっと心に残っていた」とし、内容について「人間が堕ちる様を描いた作品で、尖ったところがある。今、わかりやすい作品が多くなっているが、大人びた内容のものがあっても良いのではと挑戦し、原作の味を損なわないように作った」と語った。
上映初日には、手塚監督の舞台あいさつがある。さらに2月6日(土)~28日(日)の週末には、上田映劇の「週末子ども映画館」で、手塚治虫さんの一生(少年期・青年期・壮年期)をモデルにした、3部作『オサムとムサシ』『都会のブッチー』『クミとチューリップ』を上映。いずれも短編アニメーションで、通常は手塚治虫記念館でのみ上映している。また手塚治虫さんが企画し、未完となったアニメーションを手塚監督が完成させた、『森の伝説』2作品も特別上映する。