上田市・稲倉の棚田で初『ししおどし』 五穀豊穣・獣害対策・コロナ収束を願い 「100年続く伝統行事にしていきたい」

信州民報

五穀豊穣・獣害対策・新型コロナ収束を願って―。上田市殿城の稲倉の棚田で12日、松明を持って田んぼの畦道を歩く『ししおどし』が初めて開かれた。

同棚田では、イノシシによる被害が増大していることなどから、害虫などを退治して豊作を願う夏の民俗行事を今年、保全活動の一環として企画。今年4月発足した「稲倉の棚田地域振興協議会」が主催し、稲倉の棚田保全委員会と上田市農産物マーケティング推進室が共催した。

映画『八日目の蝉』(2011年公開)で印象的なシーンとなった、香川県小豆島・中山千枚田の伝統行事「中山虫送り」を参考とし、小豆島町中山棚田協議会に指松明作りや運営などをオンラインで教わったという。

江戸時代に始まった「中山虫送り」は、半夏生(夏至から11日目)の日に行い、火手(ほて)と呼ばれる松明をかざして棚田脇にある畦道を歩き、稲につく害虫を海へと追い払う。

稲倉の棚田は、名称を『ししおどし』(作物を荒らす鳥獣を脅し、田畑から追い払うための仕掛け)とし、保全委員会・事務局長の大山慧一郎さんは「100年続く伝統行事にしていきたい」とする。

「全国の棚田オーナー(100組)や一般にも声をかけて行いたいところだが、今年は新型コロナウイルス対策として県内のオーナーと関係者のみで行うことにした」とし、この日は8組30人のオーナーや保全委メンバー、協力者ら約100人が参加。

まず「松明作り」を行い、保全委役員の伊藤清治さんらの指導でタオルの芯をニセアカシアの木枝で固定し、長さ約1.3㍍・直径3~5㌢㍍の竹に挟み込み、アルミホイルで覆って松明を完成させた。

その後、「竹パン作り」やオカリナ演奏、上田市民吹奏楽団の演奏と共に棚田風景を楽しみ、上田市在住の料理研究家・王鷲美穂さんが棚田米と地元野菜を使って作った特製弁当を味わった。

そして午後6時、『ししおどし』がスタートする。農政局地方参事官、上田地域振興局長、上田市長らが参列して開会式を行った後、松明に点火。東屋から松明をかざしながら棚田を下り、再び上って約800㍍の道のりを、祈りを込めながら練り歩いた。最後は棚田の夜空に打ち上げ花火が輝いた。

なお今年は新型コロナウイルスにより、恒例の夏イベント(7月最終土曜日の『ほたる火まつり』、8月の金・土曜日の『イルミネーション』)は中止とした。

稲倉の棚田
保全委が試行錯誤を繰り返して作った「松明」
棚田で祈りを込めながら練り歩く
棚田に「ししおどし」

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