上田市内にある建造物2件が17日、文化審議会文化財分科会の審議・議決を経て、同会から文部科学大臣へ答申が行われた。今後、官報告示を経て、国の登録有形文化財に登録される。
今回登録される文化財は、「上田聖(うえだせい)ミカエル及諸天使(しょてんし)教会堂」(中央3)と「小泉家(こいずみけ)住宅店舗兼主屋」(中央4)の各1棟ずつだ。本件が登録されると、県内の登録有形文化財は560件(建造物559件、美術工芸品1件)となる。
なお登録有形文化財は建築物、土木構造物などのうち、原則として建設後50年を経過し、かつ①「国土の歴史的景観に寄与しているもの」②「造形の規範となっているもの」③「再現することが容易でないもの」の1つに該当するものが登録の基準となる。
上田聖ミカエル及諸天使教会堂(1932年建設)は、「造形の規範となっている」ことから登録される。市中心部にある木造の教会堂で、同建物は現在もキリスト教の教会堂として、礼拝などに使用されている。
同建物は、日本などでは寺社に多い入母屋造(いりもやづくり)妻入・撞木造(しゅもくづくり)とし、四周に下屋を廻して正面に入母屋玄関がある。内部は三廊式で、欄間(らんま)や高窓の障子、格天井(ごうてんじょう)など、伝統建築の要素を取り入れる近代和風の教会堂として貴重なもの。設計指導はカナダ人宣教師J・G・ウォーラー、大工は滝沢賢一郎。国の重要文化財に指定されている「日本聖公会奈良基督教会」(奈良市)にならったとされる。
小泉家住宅店舗兼主屋(明治前期・2016年改修)は、「国土の歴史的景観に寄与している」ことから登録される。上田城北東の染物業などを営んだ商家の建物だ。
旧北国街道に面して建つ、2階建切妻造に越屋根(屋根の上にのせた小さな屋根)を設け、正面に下屋がある。旧城下町の歴史的景観を伝える外観は、外壁を漆喰塗とし、2階は高さがあって開口部も大きい。内部は東を土間、西を居室とし、西端にも細い通り土間を通す。なお同建物の建築年代は建主の生没年、角釘の使用などによって推定するもの。現在は個人の住宅として使用しており、2016年に間取りなどを改修している。
市の文化財課担当者は「上田聖ミカエル及諸天使教会堂は社寺建築の教会堂で、国内に2例のうちの1つ。小泉家住宅店舗兼主屋は北国街道の商家の面影を残している点が貴重」と話した。